幻の機種「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」
エレベーターマニアの間で「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」、通称「インペリアル」と呼ばれている機種があります。
しかし、それらは「インペリアル」ではないことがわかりました。
どうして「インペリアル」と呼ばれるようになったのか、正しい判別はどうなのか当時の情報を基にまとめました。
何故「インペリアル」と呼ばれるようになったのか

これは、フジテックが2010年代に公開していた
「夢は壮大 想いは熱く フジテック60年の軌跡」のWEBページです(現在は削除)
創業60年を迎えたフジテックは2010年に記念誌を発刊、
記念誌と同じ内容が一時期はHPにも掲載されました。
そして、そこに載っていたのが「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」です。
『1981年(昭和56年)12月には分速150mの「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」も実用化された。』
かご内写真と共に掲載されたこの文章から、この意匠のエレベーターは「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」、通称「インペリアル」と呼ばれるようになったと考えられます。
曖昧だった「インペリアル」の定義

インペリアルと呼ばれていたエレベーター
現在まで「夢は壮大 想いは熱く フジテック60年の軌跡」は、フジテックが公開している情報の中ではネット上で閲覧できる唯一の出典となっています。しかし、該当の解説文は解釈の違いが生まれるような掲載内容だったのです。
具体的には2つの解釈が生まれました。
解釈②『運行速度が分速150m以上のものが「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」で、それ以下は「ロイヤルスーパーダイン」』
後者の主張は少数派で、前者の認識をもつマニアが圧倒的多数でしたが、結果として解釈①は間違っていました。
当時の広告から読み取る「インペリアル」登場までの流れ
「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」を知るためには、まず先代規格型エレベーター「スーパーダイン」まで遡る必要があります。

引用:1979年7月発行「エレベータ界(14巻55号)」
①1979年7月時点:リレー式交流帰還制御だった「スーパーダイン」が、マイコン制御化されていることが確認できます。

引用:1980年7月発行「エレベータ界(15巻59号)」
②1980年7月時点:「ロイヤルスーパーダイン」が発売されています。
かご内写真は「フジテック60年の軌跡」で「インペリアル」として紹介されているものと全く同じですが、大きく「ロイヤルスーパーダイン」と記載されています。
③1982年6月時点:「高速機”ロイヤルスーパーダイン・インペリアル”」の文言が記載されます。
これら3つの広告から、「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」と呼んでいたのは「ロイヤルスーパーダイン」だったことが明らかになりました。
「フジテック60年の軌跡」は間違っている?
この3つの広告「スーパーダイン」「ロイヤルスーパーダイン」「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」は、それぞれ「フジテック60年の軌跡」と相違・矛盾があります。
①ロイヤルスーパーダイン発売時期のずれ
1979年7月の広告では「スーパーダイン」がマイコン化していますが、「フジテック60年の軌跡」では”1978年12月にマイコン制御「ロイヤルスーパーダイン」が誕生”したことになっており、矛盾があります。
どうしてこんなややこしいことになったのか、それは「マイコン制御のスーパーダイン」と「ロイヤルスーパーダイン」では同じ制御盤が使用され、制御盤の型式が同じ(制御が同じ)だからではないかと推測します。
制御上では確かに1978年12月に登場したのでしょうが、編集時には見落とされたか、フジテック社内ではマイコン制御=「ロイヤルスーパーダイン」という認識になっているのかもしれません。
部品供給停止の案内でも「RSDN」と一括りにされています。
実際に1979年頃の「スーパーダイン」には「ロイヤルスーパーダイン」と同じマイコン制御をしているものが存在しますし、広告でも意匠について全く触れずマイコン制御の説明しかないことが、意匠変更なく「スーパーダイン意匠」のまま先行してマイコン制御化したことを裏付けていると思います。
②「ロイヤルスーパーダイン」の写真を「インペリアル」として掲載
2枚のかご内写真は、明らかに同じです。フジテックは「ロイヤルスーパーダイン」の写真を「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」として掲載していたのです。
これが諸悪の根源と言っても過言ではありません。
ただ、「インペリアル」も通常の「ロイヤルスーパーダイン」シリーズに内包されるような形態で全く同じ意匠だったのかもしれませんが、そうであれば「ロイヤルスーパーダイン」として掲載すればよかった話です。
広告の中身を読むと、意匠が新しくなったことにスペースを割いて説明しています。1979年8月の広告と比較すると真逆です。文脈も「マイコン制御のエレベーターの意匠が新しくなった」と読み取れます。
当初はこの写真とキャプションを基に1981年にこの意匠が出たと思われていましたが、後に1980年製の同タイプ意匠が確認されていることからも、この意匠は「ロイヤルスーパーダイン」が初出なことは明らかです。
③食い違う「インペリアル」の定義
1982年6月の広告では、「インペリアル」の速度は分速120m,150mとなっています。ところが「フジテック60年の軌跡」では「ロイヤルスーパーダイン」が分速120mまで対応、「インペリアル」は分速150mとなっており相違があります。
しかし、古いフジテック製自体が少なく、2024年現在通常の低速な「ロイヤルスーパーダイン」ですら希少な機種となっており、分速90mタイプもほぼ残っていません。元々設置台数が多くなかったと思われる分速120m,150mとなると絶滅していると考えるのが妥当です。
正しいのは?
「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」は、フジテックが1981年12月に実用化した分速150mに対応するマイコン式交流帰還制御エレベーターです。もうこれ以上のことは分かりません。
「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」は存在を確認できない、もはや幻の機種ですが、誤って掲載されたと思われる写真によりその呼び名が広がったと考えられます。
調べていく過程で、「スーパーダイン」「ロイヤルスーパーダイン」の定義にもズレが生じていたこともわかりました。
最後に「スーパーダイン」「ロイヤルスーパーダイン」「ロイヤルスーパーダイン・インペリアル」の意匠、商品名、制御を纏めたものを掲載しますので良ければご覧ください。
※これらの表は当サイト調べによる解釈に基づいて作成されたもので、誤りが含まれる場合があります。