黒ボタンの三菱エレベーター②<解説編>

黒ボタン
前のページでは、エレペットに似た黒いボタンの三菱製エレベーターを見てきましたが、一体このエレベーターは何なのか? その正体に迫りたいと思います。

※いきなりこのページに辿り着いてしまった方は、「黒ボタンの三菱エレベーター①<紹介編>」をご覧ください。

黒ボタンはエレペットなのか?

※エレペットの初期型の変遷については「初期エレペット」のページをご覧ください。

名古屋市某ビルの「黒ボタン」は、エレベーターマニアから「最初期エレペット」と呼ばれています。
三菱の初代規格型エレベーター「エレペット」は1961年に発売されました。前述の2例は1962年築のビルに設置されています。 ということはエレペット発売以降のエレベーターだからエレペットなのではないか?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
かご内操作盤は初期エレペットと似ていますし、最初期のエレペットは黒ボタンだったと考えてしまいそうです。

真相を探るべく、まずはエレペットが発売された当時の仕様を見てみましょう。仕様に合致するならエレペットということになります。
定員積載6名400Kgから11名750Kgまでラインナップされており、このエレベーターの9名600Kgも含まれています。

三菱エレペットの変遷

では意匠はどうでしょうか。およそ1966年以前のエレペットは、かごの意匠は基本的にC-1形とS-2形という形式しか存在しません。
※「アパート専用」意匠については「KJ型エレベーターの設置例」をご覧ください。

エレペットかご内意匠 三菱電機株式会社ビル施設工事部(1994)『三菱エレベーター・エスカレーターの歩み(昭和40年まで)』より引用

名古屋市某ビルの「黒ボタン」がもしエレペットならば、S-2形の意匠が採用されているはずですが、明らかに異なっています。
C-1、S-2ともボタンも黒くありません。

次にエレペットが発売される前、オーダー型が一般的だった時代の三菱エレベーターを見てみましょう。

三菱オーダーEV 向井 徳樹. 最近の三菱エレベータの標準. 三菱電機. 29(10) 1955.10. より引用

三菱オーダーEV 山田 春夫. エレベータのカゴ室. 三菱電機. 31(2) 1957.02.より引用

オーダー型エレベーターとは、かごの形や換気扇までそっくりなことがわかります。黒いボタンも使われています。

三菱オーダーEV意匠 三菱電機株式会社ビル施設工事部(1994)『三菱エレベーター・エスカレーターの歩み(昭和40年まで)』より引用

電磁ロック押釦の操作盤は、名古屋の黒ボタンとかなり似ています。しかし、この「電磁ロック押釦」は「引っ込み式」のことではないかと思います。

かつて東京都銀座には、「引っ込み式」と呼ばれている三菱「黒ボタン」が存在しました。行先階のボタンを押すと引っ込んっだまま戻ってこないことが由来です。
行先階に到着すると、ボダンは「ポンッ」と飛び出て元に戻ります。 既に更新されており、私は残念ながら見ることはできませんでしたが、YouTubeでは先駆者の方の動画を見ることができます。

結論:エレペットとは別物では?

以下に「黒ボタンエレペット」「最初期エレペット」と呼ばれるエレベーターと実際の「エレペット」の関係性を示しました。
三菱オーダーEV

建物は設計から完成まで数か月で終わるものではないですよね。エレペット発売前からビルの建築計画が進んでいたならば、当然三菱へ発注するエレベーターも オーダー型しか選択肢が無いことになります。 また、現在でも標準型エレベーターの新機種が発売された後、荷物用やオーダー型エレベーターは暫くの間旧機種の意匠や制御を用いることがあるように、 エレペットが発売されたからといって直ぐに「エレペット」もしくは「エレペットベースのオーダー型」に切り替わったとは思えません。

また、エレペットは1966年頃にマイナーチェンジが行われており、1961年~1966年頃のエレペットを「最初期エレペット」と呼ぶべきではないでしょうか。

名古屋の「黒ボタン」は、唯一残っていたエレペット誕生前の三菱エレベーターを知ることができる、大変貴重な存在だったと言えると思います。

参考文献


<< 前のページに戻る